内海慶一のブログ
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100均フリーダム
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ペッ景 PET bottle scape

【ピクトさんグッズ取扱店】
・広島市現代美術館
・ふくやま美術館
・岡山県立美術館
・喜久屋書店 イオンモール倉敷店
・スタンダードブックストア茶屋町
・ジュンク堂書店 池袋本店(7階)

作成者:内海慶一
Author:UTSUMI Keiichi
picto@mx35.tiki.ne.jp
ライフログ


ピクトさんツバメノート

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昭和22年の発売以来、多くの人々に愛されてきた
「ツバメノート」とピクトさんがコラボしました!

2冊1セットで、100セットのみの限定品です。
再生産はしません。
贈り物や永久保存版ノートとしてぜひ。

ご注文はこちらのオンラインストアから。
http://mon.cifaka.jp/?pid=116373719

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オンラインストア以外では、
岡山県立美術館ミュージアムショップでのみ販売しています。

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ツバメノートが使用しているのは
筆記に適した高級紙「フールス紙」。
ツバメノートでは、通常のフールス紙よりも
手間をかけた「特漉き」により、
筆記特性をさらに向上させたオリジナルの
「ツバメ中性紙フールス」を使用しています。
書き味に優れ、特に万年筆との相性は抜群。
ペン先が滑らかに走り、滲まず、裏写りしません。

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ちなみにツバメノートの品番には「W」と「H」があるんですが、
これは創業者・渡邉初三郎のイニシャルなんだそうです。



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# by pictist | 2017-04-23 01:20 | ピクトさん
「都市鑑賞論」イベント記録

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もう1週間経ってしまいましたが。日本ピクトさん学会presents スライドトークイベントvol.4「都市鑑賞論」にご来場いただいたみなさま、ありがとうございました。東京、大阪、広島、宮城など県外からお越しくださった方もたくさんいてうれしかったです。特に上海から文字通り飛んで来てくれた共通の友人、前川ヤスタカさんに感謝。

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私はこのイベントのために「都市鑑賞年表」を制作。喜田川守貞の『守貞謾稿』、坪井正五郎の『工商技芸看板考』、国木田独歩の「武蔵野」、萩原朔太郎のステレオ写真、坂口安吾の「日本文化私観」などを紹介し、「ソトの目」というキーワードを用いながら、人が新しい視点を獲得するというのはどういうことなのかを考えてみました。

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途中で大山さんが持ち出したのは、鑑賞スタンスについての問題提起というか悩みというか、そんな話題。大山さんの大意を私なりの言葉でまとめると以下のようになります(内海が編集/解釈した言葉です)。

《我々は「グッとくる」という言葉を使ってきた。それは「善悪美醜に関係なく魅入られる感じ」を表現するためだ。自分の「工場萌え」の萌えも、「グッとくる」に近く、「価値判断を含まない自分だけの感覚ですよ」ということを表明している言葉。しかしだんだんそれだけでは満足できなくなってきている。「調査によって得られる知識」でもなく、「表面だけを愛でる萌え」でもない、第3の価値観のようなものがあるのではないか》

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大山さんはこうも言ってます(これも大意です)。
《同じものをずっと撮り続けていると見えてくるものがある。それは本に載っているような知識ではない。10年続けてやっと気づくこともある。今の自分はそれを求めている。これは鑑賞者としての進歩なのかもしれないし、堕落なのかもしれない》

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進歩か堕落か、どちらかは分かりませんが、ただ一つ言えることは、「10年撮り続けてやっと分かることがある」と言えるのは、実際に10年撮り続けた人だけだ、ということ。大山さんはいくつかのジャンルにおいて、現にそういう体験をしてしまった。上記の第3の価値(私が便宜的につくった言い方ですが)というのはこれを指しているのではないでしょうか。実際、大山さんの著作や記事には、長年見続けてきた人からしか出ないであろう言葉がたしかにあります。

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イベント後半では、大山さんがこれまでに鑑賞してきた様々なジャンルをプレゼンしてもらいましたが、共通して言えるのは「文脈や意味を外して対象を見る」というスタンス。これは冒頭の「ソトの目」にも通じる感覚で、イベントではさらに「宇宙人の目」という言葉も出ました。

大山さんは、ゴルフ練習場を、駅の構内にある生け花を、クリスマス電飾を、まるで地球にやって来た宇宙人のような目で不思議そうに見る。大山さんの写真を見た私たち地球人は、自分が日常を「見たつもりになっていた」「知っているつもりになっていた」ことを思い知らされます。それは写真に限らず、マンション広告のコピーや車のカラーの名前など「言葉もの」についても同じ。大山さんは当たり前の日常の中にあるものを「なんだこれは?」と立ち止まって見つめ、しつこく鑑賞し続けます。文脈や意味から切り離して、対象をとことん見続ける。その先に、やっと発見することのできる何かがある。その新しい価値を表す言葉を、まだ私たちは持っていないのかもしれません。

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いろんなところで何度か書いていますが、私の活動のテーマは「見たことあるのに見えてなかった」。これはもともと、かつて大山さんと一緒にやったスライドトークイベントのフライヤー用につくったキャッチコピーでした。13年前のことです。「見たことあるのに見えてなかった」ものを追い求め、そこに興奮してしまう性格は、私に関しては今も変わっていません。私が大山さんの写真や記事に惹かれるのも、「見たことあるのに見えてなかった」といつも思わせてくれるからです。

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「都市鑑賞年表」、今回は大正期までの話で終わってしまったので、その後についてもいつかどこかでお話しできればと思っています。例えば70年代から活動を続けている名古屋の野外活動研究会は、あまり広く知られていませんが、都市鑑賞史を語る上で外せない存在だと私は思っています。代表の岡本信也さんはお会いしてみたい方の一人。

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ところで、イベントの前に希望者10数人で一緒に街歩きをしました。これまでにも何度か経験したことですが、他人と一緒に歩くのはいいものだなあとあらためて思いました。一人でゆっくり歩くのも楽しいのですが、誰かと歩いて「目玉の交換」をするのもまた楽しい。

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同じ道を歩いていても、みんなそれぞれ違う場所で立ち止まって、違う方向にカメラを向けます。「自分たちはみんな違う人間なんだ」ということが目の前ではっきり分かる。ここには一種の断絶があるわけです。でも、街を見るのが楽しいという、その一点でつながって同じ道を歩いてる。私はそれを思うと、なんだかうれしくなるのです。




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# by pictist | 2017-03-12 23:57 | イベント
イベント:「都市鑑賞論」大山顕×内海慶一

※追記あり
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vol.1「公園にはすべり台を見に来た」
vol.2「『街角図鑑』出版記念イベント」
vol.3「路上観察レジェンドDay」
と開催してきたスライドトークイベントの第4弾が決まりました。

今回のゲストは私と同い年の友人、フォトグラファー&ライターの大山顕さん。『工場萌え』や『団地の見究』などの著書で知られています。

第4弾のタイトルは「都市鑑賞論」。

今回は写真のプレゼンだけでなく、“街を見る”という行為そのものについて2人が考えてきたことを話し合ってみようと思っています。

これまでに大山さんが発表してきた様々な「鑑賞ジャンル」を見せてもらいながら、同時に、大正の考現学から現在のSNSの写真シェア文化にいたる「都市鑑賞ヒストリー」を振り返りつつ、「私たちはなぜ、ある種の『景観』に惹かれてしまうのか」を考えてみたいと思います。



日本ピクトさん学会presents
スライドトークイベントvol.4
「都市鑑賞論」

【出演】
大山顕/フォトグラファー、ライター。著書『工場萌え』『団地の見究』『高架下建築』『ジャンクション』『共食いキャラの本』、他。「デイリーポータルZ」のライターとして10年以上にわたり活躍中。 Twitter: @sohsai
内海慶一/日本ピクトさん学会会長。主に文筆業。著書『ピクトさんの本』『100均フリーダム』 寄稿『街角図鑑』『路上と観察をめぐる表現史ー考現学の現在ー』 Twitter: @pictist

【日時】
2017年3月4日(土) 19:00〜21:00(開場18:30)

【会場】
KAMP(岡山市北区奉還町3-1-35)

【料金】
2500円(1ドリンク付き)

【予約】
下記メールアドレス宛てに、お名前と予約人数、電話番号をお送りください。
picto@mx35.tiki.ne.jp (内海慶一)
*3日以内に返信いたします。




追記:当日15:30〜17:00に街歩きをします。
参加希望の方は15:30までにKAMP前に集合してください。
ルートは厳密に考えてませんが、
二十四ヶ坪地下道 http://pictist.exblog.jp/27019747/
を通って戻ってこようと思ってます。
みんなで一緒に歩くだけです。

会場のKAMPはイベントが始まる1時間くらい前までは
普通にカフェ営業をしています。
早めに会場に着く方は中で食事やお茶をしながら
過ごしていただくこともできます。
また、近くに「ドットカフェ」「オンサヤ」という
カフェもあるので(検索してね)どうぞご利用ください。

ツイッターのハッシュタグ #都市鑑賞論

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# by pictist | 2017-01-30 23:44 | イベント
『勉強できる子 卑屈化社会』

2012年に岡山で2014年に東京で一緒にスライドトークイベントをやった前川ヤスタカさんが新著を上梓されました。

『勉強できる子 卑屈化社会』

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日本では勉強のできる子がなぜか「うしろめたさ」を感じてしまう。なぜかみんな、勉強ができる人をストレートに褒めない。本書はそんな風潮が生み出された背景を考察し、解決策を提言する本です。

タイトルの「社会」という語が示すように、これは一種の日本社会論です。日本人の多くが漠然と思っていることを指摘し、「なぜそう思うようになったのか」を論理的に解析しています。社会心理学の書とも言えますし、また、メディア論・テレビ論にもなっています。

とはいえ、決して堅苦しい本ではありません。著者の体験を踏まえた「あるある話」や、具体的な事例をベースに話が進むので、分かりやすくて読みやすい。あいだに入る能町みね子さんのイラスト漫画もいちいち面白いです(特に165ページの三角関数のやつ、爆笑しました)。

「勉強できる子・できた子」は共感しまくりの内容だと思いますが(現役世代へのアドバイスもあります)、そうじゃない人(私です)にとってもたいへん読み応えのあるものになっています。この社会に満ちている目に見えない「空気」を、本書は実にうまく捕獲しています。

「勉強もスポーツも平等に称えようよ」という、シンプルだけど今まで誰もちゃんと言わなかったことを真正面から唱えた本書。とても意義のある第一歩だと思います。いつか未来の人が『勉強できる子 卑屈化社会』を図書館で見つけて、「昔の日本社会ってこんなだったの!?」って驚いてたら、いいなあ。


『勉強できる子 卑屈化社会』
著者:前川ヤスタカ
出版社:宝島社
価格:1200円(税別)
ページ数:246P
ISBN:978-4-8002-5943-1
発売日:2016年12月10日



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# by pictist | 2017-01-04 09:32 | レビュー
「三人俳句 よる更けて」の遊び方


「三人俳句 よる更けて」、通称「よるふけ」の遊び方を説明します。

これは昔の人が「天狗俳諧」と呼んでいた遊びのTwitter版です。やり方は簡単。俳句の上五・中七・下五の各パートを3人が「せーの」で同時にツイートします。そうすると、思いも寄らない言葉の組み合わせが生まれるわけです。

たとえば、2013年の夏にやったときはこんな句が生まれました。





「史上初 首から下が たまごやき」

こんな言葉が偶然できあがるというのが面白いですよね。それから、この句はどういう意味なんだろう?なにを表現したものなんだろう?とみんなで解釈していくのがまた楽しいんです。

「よる更けて」は鑑賞者がつくる作品です。「作者の意図」なんて存在しません。読む側が意味を付与することによって初めて俳句に血が通う。そして、鑑賞者の数だけ解釈の種類があっていいんです。

自分がうまく解釈できなかった俳句に、他の誰かが見事な解釈を与えるのを見たときは感動します。同じ言葉を見て、思い浮かべることは人によってこんなにも違うのか!とびっくり。

ハッシュタグは#yorufuketeです。

こちらは2013年の「俳句の日スペシャル」の様子。
http://togetter.com/li/550820

まず詠み手をやりたい人は進行役にリプライします。進行役はその中から3名選び、各人がどのパートを受け持つかを割り振ってこういうふうにツイートします。

#yorufukete 入ります。上五 @***** 、中七 @***** 、下五 @***** での「よる更けて」。私の指定する時間にそれぞれの担当をポストしてひとつの俳句をつくります。ご準備はよろしいですか。>お三方

3人からOKの返事をもらったら、進行役は「0:32!」というふうに時刻をツイートします。詠み手は時報などで正確な秒数を確認しながら、その時刻ジャストで自分のパートをツイートしてください。時刻を指定されてからツイートするまでの数分間、けっこうドキドキしますよ。

詠み手として参加できる人の数はどうしても限られますが、先ほど書いたように、この遊びは鑑賞者が主役です。ぜひ「マイ解釈」をツイートしてみてください。





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# by pictist | 2016-12-31 02:40 | あれこれ
2016年の活動記録


〈3月〉
●BNN新社より『100均フリーダム』kindle版リリース(2010年初版・4刷)
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〈4月〉
●日本ピクトさん学会presents
滝本晃司スライドトークイベント
「公園にはすべり台を見にきた」を企画・開催
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●『街角図鑑』(三土たつお編、実業之日本社)に「装飾テント」を寄稿
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●RSKラジオ「全員起立」に出演(街鑑賞家として)

●「ピクトさんレインポンチョ」リリース
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〈6月〉
●日本ピクトさん学会presents
「街角図鑑」出版記念
スライドトークイベントを企画・開催
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●NHKラジオ第一「すっぴん」で
高橋源一郎さんが『100均フリーダム』を紹介
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〈8月〉
●ピクトさんTシャツ2016(完全受注生産)をリリース
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〈9月〉
日経MJと日本経済新聞に掲載(ピクトさん研究家として)
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〈10月〉
●日本ピクトさん学会presents
スライドトークイベント
「路上観察レジェンドDay」を企画・開催
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●NHK「おはよう日本」に写真出演(ピクトさん研究家として)


〈11月〉
「芸術交流2016 オルタナティブマップ」企画・取材・執筆・撮影
http://pictist.exblog.jp/26762645/
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〈12月〉
●スライドトークイベント
「中塚浩が遺した昭和の写真〜戦前・戦後の東京の日常〜」に出演



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# by pictist | 2016-12-24 06:08 | あれこれ
何も問いかけない写真/中塚浩

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2016年12月3日、野村泰介さんが開催した「中塚浩が遺した昭和の写真 〜戦前・戦後の東京の日常〜」というスライドトークイベントに出演させていただいた。イベントの前後に考えたことをまとめておく。

野村さんが管理する中塚浩の写真ブログ
SUISHI'S PHOTO

suishi(すいし)こと中塚浩(1916-1997)は1940年代から半世紀以上にわたって日常の写真を撮り続けた。街並み、人々、店舗、乗り物、部屋の中……。しかし中塚は生前、その膨大な写真を人に見せたことはなかった。家族を撮った写真でさえ、写っている当人に見せることはなかった。中塚の写真が「人に見せるための写真」ではなかったことは強調しておきたいポイントだ。

携帯電話・スマホに撮影機能が付いている現在、写真の持つ意味は昔と比べて少しずつ変化してきている。今なら、メモがわりにスマホで何かを撮るということはあるだろう。また、なんとなく目の前の景色が気になったから撮ったということもあるかもしれない。しかしフィルム時代においては、なかなかそのような撮り方はできなかった。

市井の人々は多くの場合、誰かと思い出を共有するために写真を撮った。だからアルバムがあった。アルバムに写真を貼った。しかし中塚は人と写真を共有しようとはしなかった。人に見せる必要がないので、ほとんどの写真は袋に入れっぱなしの状態で、アルバムに貼られていない。

もちろん、「自分自身が後で見返して懐かしむために写真を撮る」ということは、私たちにもあった。しかしそれは特別な日や特別な場所を思い出に残すためだろう。あるいは好きなモノ・好きな場所・好きな人の姿を手元に置きたいという欲望によってシャッターが切られた。

中塚の写真からは、そのような分かりやすい欲望は感じられない。中塚の写真にはテーマ性がない。とにかくなんでも撮っている。まるで見るものすべてを写真に残そうとしているかのようだ。

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中塚写真の名作の一つ、銀行の窓口(1964年)

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胃潰瘍で入院した際に撮った写真。病院の廊下の掲示板(1964年)

中塚はすべての写真に撮影場所と日付けを記しているが、はたして後年、それを見返していたのだろうか。どうもそのようには感じられない。段ボール箱に詰め込まれた膨大な写真袋を何度も出し入れしていたとも思えない。撮影し、記録し、保管した時点で本人の中では完結していたのではないだろうか。

また、中塚の写真はいわゆる「記録写真」とも違う。記録写真もやはり、あとで見返すために撮られるものだ。さらに言えば、あとで役に立つだろうという想定のもとに撮られる(社会的に、あるいは作品として)。しかし中塚は、自分の写真をのちのち何かに役立てようとはまったく考えていない。発表するつもりがないのだから。

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自宅でなぜかミシンを撮る(1965年)

もう一つ。中塚は、「写真が趣味」「写真好き」ではなかった。写真を趣味にしている人の多くは、自己表現として写真を撮る。コンテストに応募する人もいる。大きく引き伸ばしてどこかに展示することもある。そして撮影技術を磨こうとする。そのために被写体を探す。つまりそこにおいて被写体は写真に服従させられている。

しかし中塚の写真からは「表現臭」が一切感じられない。50年間、撮影技術はほとんど向上していない。うまく撮ろうとしていない。被写体が「解放」されているのだ。ご家族も、中塚が写真雑誌や写真集を見ていたという記憶はないと証言している。

中塚浩の写真は淡々としている。だからこそ凄みがある。

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なんでもない歩道(港区虎ノ門/1964年)

中塚の写真はしばしば「shoot1230」を想起させる。「shoot1230」とは、2010年に大山顕がツイッターで呼びかけ、現在も続いている実験的な写真遊びだ。毎日12時30分になったらどこで何をしていても強制的に写真を撮り、それをツイートするというもの。「shoot1230」は撮影者から「意図」や「欲望」を剥ぎ取る。参加者は「わざわざ写真に撮ったことのない何か」を、構図を練る間もなく撮らされてしまう。

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岡電バス車内。晩年もこのような写真を撮り続けていた(1994年)

中塚は50年以上にわたって撮りためた写真を大切に保管していたが、かといってそれを子供や孫に託そうとしたりしていない。「後世の人に見てもらいたい」とも思っていない。中塚の死後、彼が写真を保管していた段ボール箱はあやうく廃棄されるところだったそうだ。孫の野村泰介さんがたまたま「発見」し、救出したことで日の目を見た。

今回のイベントのタイトルを野村さんと相談して「中塚浩が遺した昭和の写真」と付けたが、実際は「遺した」のではなく、たまたま「遺った」のだ。撮影者の人生とともに消えていたはずの写真を、私たちは偶然目撃したに過ぎない。

中塚浩の写真は、何も問いかけない。何も問いかけてこない写真を見て、私はさまざまなことを考えてしまう。



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# by pictist | 2016-12-12 22:08 | イベント
岡山の知られざる地下道

岡山駅からそれほど離れていない場所に、こんな地下道があることを最近知りました。

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自転車がやっとすれ違えるほどの狭い道。しかも薄暗くて、ちょっとRPG感ある。20年近く岡山市街地に住んでるんですが、今までこんな道があることを知りませんでした。何人かの知人にも聞いてみたけど、みんな初めて知ったとのこと。

実際にこの地下道を利用する住民の方だけが知っている道なのでしょう。

名前は「二十四ヶ坪地下道」。「坪」というのは古代〜中世の土地区画の単位なんだそうです。区分けされた土地の24番目のエリアということなのかな。

場所はここ、岡山駅の西南西。南北にJR線をくぐっています。
Googleマップ|二十四ヶ坪地下道

私はかつてこの入口の前の道を自転車で通ったことがあるんですが、完全に見逃してました。だってこんななんですよ。

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この写真は上記マップのピンの位置に立って北を向いた状態です。写真の下にちょっと見えてますが、東西方向に用水路が流れています。で、用水路の向こうが低くなっている。

用水路の向こう側に行くと……

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東側から坂道を降りてきて、西を向いている状態です。右に曲がると、先ほどの細い道が続いてます。

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こう。

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そしてこう。

地下道を抜けて北側に出て、振り返った風景がこちら。
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ここから車道に出るまでさらに何十メートルかあるので、知らない人が多いのも頷けます。こういうスポットは日常の中のちょっとしたアトラクションみたいな感じで、面白いですね。




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# by pictist | 2016-11-24 00:11 | あれこれ