カテゴリ
全体ピクトさん 執筆 イベント レビュー あれこれ ぬかコラム profile 最新の記事
以前の記事
2017年 11月2017年 09月 2017年 08月 2017年 07月 2017年 06月 more... twitter
Webサイト
日本ピクトさん学会
100均フリーダム 装テン(装飾テント) ペッ景 PET bottle scape 鉄管スロープ 【ピクトさんグッズ取扱店】 ・広島市現代美術館 ・ふくやま美術館 ・岡山県立美術館 ・喜久屋書店 イオンモール倉敷店 ・スタンダードブックストア茶屋町 作成者:内海慶一 Author:UTSUMI Keiichi picto@mx35.tiki.ne.jp ライフログ
その他のジャンル
|
暗闇の中のエモーション(ドロップ君のこと)
ドロップアウトカウボーイズ君という20年来の友人がいます。彼はピンク映画を年間270本以上鑑賞し、その梗概と感想をブログに書き続けています。つまり「ピンク映画鑑賞家」。彼自身は「ピンクス」という肩書きを名乗っています。 そのドロップアウトカウボーイズ君(長いのでドロップ君と言います)の感想文が、このたび1000本に達したとのこと。ドロップ君、1000本達成おめでとう。他に誰も祝う人はいないだろうけど。 彼のモットーは「鑑賞した作品の感想文はすべて書く」。年間270本で1000本ということは4年あまりで到達したのかと思うかもしれませんが、そうではありません。実際には8年ほどかかっています。 ピンク映画は通常2本または3本立てで公開されるのですが、そのすべてが新作であるとは限らないからです。すでに観た(感想文を書いた)作品を2度3度と観ることになるので、年間鑑賞本数は270本以上あっても、1000本達成には8年かかったというわけです。 ● さて、こちらがそのブログです。 真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館 読みにくいですね。はっきり言って友人である私もすべてに目を通してはいません。ごく少数のピンク映画愛好家以外に、このブログを訪れる人はいないようです。(ちなみに彼が「歴史的仮名遣ひ」を使っているのは福田恆存の影響です) タイトル下の説明文にも書かれていますが、彼は自分のやっていることを「虚空を撃つ無為」であると言ってます。ピンク映画の感想文を1000本書いたからといって、それがいったい何になるというのか。おそらくは無為である。そのことを、彼は自虐でもなく、開き直りでもなく、ただ「そういうこと」として続けています。 私は「なぜ続けているのか?」を彼に訊いたことはありません。なぜなら、人間とはそういうものだろうと思っているからです。答えなんてない。自分自身でもはっきり分からない情熱というものが、あなたの中にもありませんか。 ● ドロップ君がピンク映画を観始めたのは1999年だったので、もう13年前ということになります。「吸い寄せられるように」と彼は言ってました。当時26歳。 これを私なりに解釈すると、おそらく彼にとって「そこが世界の片隅であること」に意味があったのだろうと思います。ピンク映画館というのは、決して陽の当たる場所ではない。しかし、だからいい。自らを「ドロップアウト」と名乗っていることからも分かるように、ドロップ君はリア充な人間ではありません。世界の真ん中で生きることが苦手な人です。 そんな彼が「自分が居てもいい場所」として見つけたのがピンク映画館だった。あらたまってちゃんと訊いたことはないけど、きっとそういうことだろうと私は思っています。なにしろ10代の頃からの付き合いなので、行動原理はお互いに理解しているつもりです。 ● これだけ熱心にピンク映画を鑑賞し続けていると、たまに「ピンク映画の何がいいのか?」という質問をされることがあるようです。そんな時、彼は必ず「裸」と答えます。本当は他にもいろいろと言えることはあるけれど、あえて理屈は述べない。裸ありきの劇映画。それでいいじゃないか、というわけです。 ちなみにこの前「いちばん印象に残っている作品は?」と聞いてみたところ、『淫行タクシー ひわいな女たち』という答えが返ってきました。素晴らしい作品だとのことです。彼はこんな言い方をしました。「どこで誰が面白い映画を撮ってるか分からないよ」 私は残念ながらピンク映画を観たことがないのですが、1000本鑑賞した人間がベストだと言う作品なら、ちょっと観てみたいな、と思いました。関根和美監督の2000年の作品だそうです。 ● ドロップ君に聞いて初めて知ったのですが(ピンクの話は全部そうだけど)、ピンク映画の配給会社は現在3社あって、そのうち新作を製作しているのは1社だけなんだそうです。残りの2社はもう製作をやめており、旧作を配給するだけ。つまり斜陽産業なわけです。その1社が製作している本数は年間35本程度。それも年々少なくなっているそうです。 「ピンク映画はいつなくなってもおかしくない」とドロップ君は言います。たしかに年間35本というのはリアルな数字です。彼は今後もピンク映画を観続け、おそらくその最期を看取ることになるでしょう。何百回と足を運んだピンク映画館(彼は〝小屋〟と呼びます)がなくなったとき、ドロップ君は何を思うのか。私にはその気持ちを想像することはできません。 以前、ドロップ君からピンク映画についていろいろと聞いたとき、彼がこんなことを言ったのを憶えています。「低予算だし、ルーティンでつくられたような作品がほとんどだけど、何十本かに一本はグッとくる作品があるんだよ。つくった人のエモーションが見えるような」 そして彼、ドロップアウトカウボーイズは、こう続けました。 「誰にも知られないエモーションというものが、あってもいいよね」 ーー eastern youth 『矯正視力〇.六』 ドロップ君の外見は、ちょっぴり吉野寿に似ています。
by pictist
| 2012-04-19 20:40
| あれこれ
|